相続財産の評価 2024/11/6

相続した不動産・土地の評価方法

相続した不動産・土地の評価方法

相続税の納税額を大きく左右するのが、土地や家屋などの不動産の評価です。国税庁の発表によると、土地と建物が相続財産の約4割を占めており、その割合から言っても税額への影響の大きさがわかります。そう聞くと「自分や親が所有する土地や建物の評価額は、いったいいくらぐらいなのか?」が気になるのではないでしょうか。相続における不動産評価のしくみを知り、いずれ訪れる相続に備えましょう。

相続した不動産の価格はどうやって決まる?土地の評価は5通り!?

土地の価格は、一物四価とも五価とも言われます。これは一物(一つの土地)に複数(4つないし5つ)の価格が付けられるという意味です。なぜこんなにたくさんの価格の決め方(評価方法)があるのかと疑問に思われるかもしれませんが、それぞれに意味があり、使い方があります。

実勢価格

市場において、実際に不動産が売買された価格のことです。同じエリアで同じような条件の土地であれば、だいたい同じような価格で取引されていますので、不動産売買をするときの目安になります。ただ土地は大量生産された製品とは異なり、同じ広さであったとしても、個々の状況や事情により価格が大きく異なります。そういった意味で、実際に不動産取引をする場合には、あくまで目安としての利用に留めましょう。

公示価格

毎年3月に国土交通省が公表している地価のことです。全国に26,000ほどある標準地の、1月1日時点の価格が公示されています。公示価格は実勢価格の約90%と言われ、売買時の取引価格を決める上で、目安に使われています。

基準地価格

毎年9月に各都道府県から公表されているのが、基準地価です。全国約22,000ヶ所を対象として、7月1日時点の価格が公表されています。公表時期が公示地価と半年ずれることから、公示地価の動向を補完するものという位置づけもあります。

路線価

毎年7月に国税庁から公表されている、相続税や贈与税の計算基礎となる評価額です。1月1日時点の主要道路に面した土地の価格のことで、地価公示価格や実勢価格、不動産鑑定士の評価などを加味して決定されます。路線価は公示価格の約80%、実勢価格の約70%の水準となっています。

固定資産税評価額

各地方自治体が、固定資産税、不動産取得税、都市計画税などを計算するための基準として使用する価格です。1月1日時点の評価額が3年に一度公表され、公示価格の約70%、実勢価格の約60%の価格水準です。不動産登記をする際の、登録免許税の計算基礎としても使用されます。

相続した不動産・土地の評価方法は、用途によって使い分ける

相続で土地の評価が必要なシーンは、2つあります。一つは相続税の計算基礎を算定するとき、もう一つは遺産分割をするときです。複数の評価方法が存在する中で、それぞれどの方法を利用するのでしょうか。

相続税評価額の算定

相続税がかかるかどうかは様々な条件によりますが、相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を超えると予想される場合は、課税される可能性は充分にあります。そこで相続財産の多くを占める不動産(特に土地)の相続税評価額がわかれば、相続税の対象となるかどうかの判断材料になります。

相続税の計算において、財産の評価方法は被相続人が亡くなった日の“時価”が原則です。時価と聞くと実勢価格を想像しますが、土地の場合は路線価方式(または倍率方式)によって計算することとされています。土地の相続税評価額は広さ(平米)×路線価や、固定資産税評価額×評価倍率で求めるので、相続税の対象になるかどうかを大雑把に試算することができます。実務では、正確な測量や状況・環境に応じた補正で評価額を下げることが可能なので、ここで求めた金額は単なる目安と考えましょう。

土地の相続税評価額の計算方法については下記で詳しく説明していますので、ご参照ください。

遺産分割協議における土地の評価

土地をだれが相続するかを話し合い(遺産分割協議)で決める際にも、評価が必要になります。相続人のうち誰か一人が土地を相続する場合、他の相続人に対して、それぞれの権利に応じたお金を支払わなければならないケースがあるからです。土地を相続してお金を払う人は、評価額が低い方が嬉しいですし、相続しないことと引き換えにお金をもらう人はその逆です。

遺産分割協議における土地の評価は、実勢価格とするのが望ましい方法です。相続する土地がある地域の不動産業者に簡易査定を依頼すると、実勢価格を調べてもらえます。依頼する業者によって評価が異なる場合がありますので、複数社の査定を取り、平均額を取るのが一般的です。

相続人全員の合意があるなら、公示価格でも固定資産評価額でも何ら問題はありません。公示価格は実勢価格の約90%ですから、不動産業者に依頼する手間や時間を省きたい場合には、公示価格を0.9で割り戻した金額を実勢価格とみなすという方法も取れます。

相続人同士がもめてしまい、評価額が決められない場合には、裁判所が選任した鑑定人に評価をしてもらうことになります。鑑定費用は、一般的な住宅でも数十万円かかるので、なるべく話し合いによって決めたいものです。

土地よりわかりやすい!相続した不動産に含まれる建物の評価

土地を相続したケースについて、その評価方法を説明してきましたが、建物についてはどうでしょうか。公の評価は固定資産税評価額しかありませんので、どの評価指標を使うかを迷うことがありません。建物の遺産分割においては売買相場を利用します。固定資産税評価額を0.5で割り戻しても、相場に近い金額が出るでしょう。相続税評価額の計算方法は、土地の評価に比べると簡単です。自宅や親の家の評価額が気になる方は、試算してみてはいかがでしょうか。

建物の相続税評価額の計算方法

建物の相続税評価額は、基本的には固定資産税評価額をもとに計算しますが、用途や状況に応じて算出方法が異なります。

自家用家屋の相続税評価額

被相続人が自分で住むために所有していた建物については、固定資産税評価額が相続税評価額です。市区町村役場から固定資産評価証明書を取り寄せてもいいですし、固定資産税納税通知書(課税明細書)があれば、そこからもわかります。納税通知書の場合には「評価額」または「価格」と書かれた欄の金額が、固定資産税評価額です。

この記事のポイント

自家用家屋の相続税評価額計算式

自家用家屋の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1

貸家の相続税評価額

居住用、店舗用などにかかわらず、被相続人が他人から対価を得て貸していた建物については、次の計算式で算出します。

この記事のポイント

貸家の相続税評価額計算式

貸家の相続税評価額 = 固定資産税評価額 ×(1 – 借家権割合×賃貸割合)

借家権とは、その建物(部屋)を借りている人の権利のことです。貸している人は、相続税評価額を計算する上で、借家権を差し引くことができます。借家権割合は、ほとんどの地域で30%となっています。

賃貸割合とは入居率のことです。10室あるアパートで3室が空室であった場合、賃貸割合は7/10となります。

建設中の家屋の相続税評価額

上記2つの評価方法は、固定資産税評価額をもとに計算しています。しかし建物を建設中に被相続人が亡くなってしまったケースでは、自治体の評価額が出ていません。その場合、相続開始日までにかかった費用現価(工事進捗度に対応する建築費用)の70%が、相続税評価額となります。

この記事のポイント

建設中家屋の相続税評価額計算式

建設中の家屋の相続税評価額 = 費用現価 × 70%

不動産・土地の相続税評価額は、税理士によって大きく変わる

不動産の評価についてザッと説明してきましたが、実際の相続ではそう簡単にはいきません。特に土地の評価は、さまざまな補正率や特例を利用することで評価額を大きく下げることができますが、その判断は税金のプロである税理士でも難しいところです。税理士次第で、評価額が数千万円も違ってしまうこともあります。

不動産を相続する方にとって、相続税を少しでも低く抑えられるかどうかは、税理士選びにかかっています。相続財産に不動産がある場合には、相続の申告件数や不動産に関する知識が豊富な税理士に相談しましょう。

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