お墓の相続(承継)税金はかかる?誰が継ぐ?お墓管理の法的なルール
「お墓を相続すると相続税や固定資産税はいくらかかるのか」「次男だが長男にかわって墓を相続できるのか」「相続放棄をしたけれどお墓は守りたい」など、相続時のお墓の取り扱いについて知りたい事はたくさんあるでしょう。 今回はお墓の相続(承継)の税金や相続する人、相続時の注意点などについて解説します。
お墓の相続に税金はかかるのか
お墓を保有している方が亡くなると、お墓の相続(承継)が発生します。お墓を守るのはいいけれど、相続税や固定資産税などの税金が心配という方もいるでしょう。
ここでは、お墓の相続と税金の関係をみていきます。
お墓の相続税
お墓は祭祀(さいし)財産ですから、相続財産とは区別されます。そのため相続税はかかりません。
祭祀財産とは
祭祀財産は「系譜」「祭具」「墳墓」のことを言います。系譜は家系図や家系譜などの記録文書を指し、祭具は仏壇・仏像・神棚などのことです。
墳墓はお墓のことで、基本的には墓地も含みます。ただしあまりにも広い墓地は認められません。過去の判例でも「墳墓に含まれる墓地の範囲は、墳墓と社会通念上一体の物とみてよい程度に密接不可分の関係にある範囲に限られる(平成12年8月25日広島高等裁判所の判決より)」とされています。
また、お墓などの祭祀財産を承継する人を祭祀承継者といいます。
お墓の固定資産税
お墓には固定資産税はかかりません。通常は墓地や霊園の区画を購入してお墓をたてますが、その区画の土地を購入しているわけではなく、使用権を購入しています。そのため固定資産税の負担はありません。
祭祀財産は非課税
それでは墓地や霊園の固定資産税はその所有者が支払うかというと、そうではありません。墓地については固定資産税を課することができないという規定が、地方税法(第348条2項)にあるためです。
被相続人の所有する土地にお墓をたてた場合も同様です。しかし前述のとおり、祭祀財産と認められる墓地の範囲は限られます。祭祀財産を利用した租税回避を防止するためです。
お墓には管理料が発生する
お墓に税金はかかりませんが、管理料が毎年必要です。祭祀承継者はお墓の管理だけでなく法要も主催しますので、その費用も負担します。
お墓を相続するのは誰か
相続財産の相続は法律で誰が相続するのか、その割合などが細かく定められています。
これに対し、祭祀財産の承継について明確な決まりはなく、民法で優先順位が指定されているのみです。そしてお墓は分割できませんから、基本的に1人で承継します。
<祭祀財産承継の優先順位(民法897条より抜粋)>
1. 被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者
2. 慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者
3. 慣習が明らかでないときは、承継すべき者は、家庭裁判所が定める
被相続人が指定した人が承継する場合
遺言などで被相続人が祭祀承継者を指定していた場合は、その人が承継します。書面ではなく口頭で指定していた場合も有効です。
話し合いで決まった人が承継する場合
被相続人の指定がなければ、「その土地慣習に従って祖先の祭祀を主催すべきもの」が、承継します。しかし実際には親族間での話し合いによって承継者を決めることが多いでしょう。
兄弟のうち「長男・長女が承継する」という決まりはない
昔は長男や長女が承継するというのが一般的でしたが、実は法律的にそのような決まりはありません。次男でも三女でも、誰でも祭祀承継者になり得ます。
3.家庭裁判所が決定した人が承継する場合
慣習が明らかではなく、親族間で話し合っても承継者を決められない場合は、家庭裁判所に調停の申立をします。調停が不調に終われば審判に進みます。
墓地や霊園側の規定に注意
祭祀承継者は親族間の話し合いが成立すれば、誰がなっても良いものです。しかし、墓地や霊園の規定で配偶者と血縁者以外への名義変更を認めていないケースもあります。
親しい友人や内縁関係の配偶者が祭祀承継者になる予定の場合は、墓地や霊園の管理者にあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
お墓の相続(承継)方法
祭祀承継者が決まったら、お墓の名義変更をします。お墓の相続手続きというのは、通常この名義変更を指します。
名義変更の必要書類
名義変更に必要な書類はその墓地や霊園によって異なりますので直接確認してください。一般的には下記のようなものが必要です。
- 承継使用申請書(墓地や霊園によって様式が異なる)
- 墓地との契約書類(墓地使用許可証・墓地使用承諾書・永代使用承諾書など)
- 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本
- 承継者の戸籍謄本
- 承継者の住民票
- 承継者の実印・印鑑証明書
- 遺言書や親族の同意書
- 名義変更手数料(墓地や霊園によって異なる)
名義変更手数料は公営の墓地でしたら高くても数千円程度です。これに対し民営の霊園は1万円以上かかることもありますから、要確認です。
お寺の墓地ですと、お布施が必要な場合もありますので、こちらも確認が必要でしょう。
お墓の相続(承継)後にすること
無事にお墓を承継したあとも、祭祀承継者は役割があります。しかし、これらの役割は法律などで強制されているものではありません。
お墓の維持管理
お墓の維持管理は祭祀承継者が行います。他の親族等が協力してくれれば、一緒に行っても構いません。
法要
法要の主催も祭祀承継者の役割です。親族への連絡や調整、費用の負担もします。負担が大きい時は他の親族等に協力してもらっても構いません。
遺骨の管理
祭祀承継者はお墓だけでなく、遺骨の管理もします。墓じまい(お墓を片付けて遺骨を別の場所で供養すること)や改葬(お墓を移動すること)の判断も祭祀承継者が行えるということです。
お墓の相続の注意点
一人しか相続できない
お墓を相続する祭祀承継者は原則1人です。そのため、兄弟全員で相続するというようなことはできません。
名義変更費用や管理費用がかかる
祭祀承継者には名義変更手数料や管理料、法要の費用などの負担が生じます。法要や管理をせずに墓じまいをする場合も別途費用がかかります。そのため相続財産を多めに配分してもらうなどの話し合いが必要なケースもあるでしょう。
相続放棄をしてもお墓は相続できる
お墓は相続財産ではありませんから、相続放棄の手続きをしても承継できます。逆を言えば、相続放棄をしても祭祀承継者となり管理料を負担する可能性があるということです。
祭祀承継者は祭祀財産を処分できる
遺骨の管理方法は祭祀承継者次第で決まり、遺骨を処分する権利もあります。そのため、他の親族が希望していない場合でも、墓じまいをしたり、別の土地へ改葬することができます。
祭祀承継者を決める場合には、このようなことも考慮して慎重に話し合いましょう。
お墓で節税ができる?
お墓をたてると節税ができるという話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。お墓は非課税資産ですから、生前に購入することで相続税の節税になります。100万円のお墓を生前に購入した場合、相続財産が100万円減り、相続税負担が減る可能性があるのです。
お墓の消費税の取り扱い
永代使用料には消費税はかかりません。しかし墓石(工事費含む)や管理料には消費税がかかります。
お墓は生前承継できない
祭祀財産は原則的には生前承継できません。相続発生前に子どもなどが承継しておくことはできませんし、祭祀承継者となった後に大変だからといって他の人に代わってもらうこともできないので注意しましょう。
ただし、祭祀承継者が外国へ帰化した場合や、疾病などによりお墓の管理ができなくなってしまった場合、例外的に生前承継が認められることはあります。
お墓の相続は計画的に
お墓を持っている場合、祭祀承継者をあらかじめ指定しておくことで、相続時に親族間で揉めることなく承継ができるでしょう。生前にお墓をたてれば節税になることもありますから、お墓の相続は計画的に行うことをおすすめします。
もしも承継者が決まらない場合や他の相続財産の分割でお困りの場合は、専門家へ一度相談してください。税理士なら、節税対策についてもアドバイスできるでしょう。