遺言書の作成 2024/11/6

遺言書の効力~遺言書に遺してできること・できないこと

遺言書の効力~遺言書に遺してできること・できないこと

終活に際して重要な意味をもつ遺言ですが、遺言書は絶対的なものではないことをご存じでしょうか? 「遺言書に遺してできること・できないこと」を理解しておかないと、せっかくの遺言が無駄になってしまう可能性もあります。 そこで今回は、遺言書の効力について解説します。

遺言の効力・遺言で出来る事とは?

遺言でできることには、大きく分けて

  1. 相続財産や保険金などのお金に関すること
  2. 人の身分に関すること
  3. 遺言の執行に関すること

の3つがあります。

それぞれの内容を詳しくみていきます。

相続財産や保険金に関すること

遺言では自身の財産の分配方法などを指定できます。

相続人それぞれの相続分の指定・遺産分割方法の指定

遺言がなければ、相続財産は法定相続分といって、民法で定められている割合で分けるのが基本です。しかし、それでは不動産などの簡単に分割できない相続財産をどう分けるかで揉めてしまう可能性があります。

例えば配偶者などの特定の相続人に自宅等、特定の相続財産を指定して遺したいこともあるでしょう。そのような場合に誰にどれくらいの割合で相続させるのか、何を誰に相続させるのかなどを細かく指定することも可能です。

そのほか、相続財産に土地がある場合、「特定の相続人に遺す」「分割して相続させる」「売却して現金を分割する」など、具体的な遺産分割方法の指定もできます。また、分割方法の決定権を第三者に委託することも定められます。

相続人の遺留分には遺言の効力が及ばない

ただし遺留分といって、兄弟姉妹以外の相続人が請求できる最低限の遺産の割合は侵害できません。

遺留分を侵害した遺言を相続人全員が容認すれば問題ありませんが、もしも遺留分を請求したい相続人が出てきたら、遺言によってこれを禁止することはできません。つまり法的には、遺留分に対しては遺言の効力が及ばないのです。

遺産分割の禁止

相続開始から5年以内であれば、遺産分割の禁止を定めることができます。すぐに遺産分割をはじめると揉めそうなケースなどには有効かもしれません。

特別受益の持戻し免除

特別受益とは、相続人が被相続人の生前に贈与された財産を言います。通常、相続人間の公平性を保つため、特別受益は「みなし相続財産」として他の相続財産と合わせて遺産分割します。

しかし、特別受益を受けていた相続人が他の相続財産を受け取れない可能性もでてきてしまいます。そのような場合には、遺言でこの特別受益の持戻し(特別受益をみなし相続財産とすること)を免除できます。

ただし、法的な効力が及ぶのは遺留分を侵さない範囲の相続財産に限られます。

遺贈や寄付

法定相続人(民法で定められた相続人)以外の人に財産を遺したい場合は、遺言で遺贈できます。内縁の妻に財産を遺したい場合なども、遺贈になります。

また、特定の団体などに相続財産を寄付したい場合も遺言で定めます。ただし、どちらも法的効力が及ぶのは遺留分を侵さない範囲内になります。

生命保険金受取人の指定

遺言の効力があるのか否か問題となるケースもあった生命保険金の受取人変更ですが、平成22年の保険法制定により遺言で変更できることが明確になりました。

人に関すること

相続人の廃除(廃除の取り消し)

特定の相続人を廃除したい場合には、推定相続人(遺言作成時点で相続人になる可能性のある人)の廃除を遺言で定めることができます。既に廃除されている推定相続人がいる場合、遺言書で廃除の取り消しをすることもできます。

ただし遺言書で相続人廃除が指示されていた場合、相続開始後に家庭裁判所に廃除の申し立てを行い、認められなければなりません。確実に廃除の申し立てをするためには、遺言執行者を指定しておいた方がよいでしょう。

子の認知

認知していない婚外子などがいる場合は、遺言で認知できます。

未成年後見人(未成年後見監督人)の指定

未成年の子がいる場合、遺言で未成年後見人を指定できます。未成年後見人は、自分が死亡した場合に他に親権者がいない場合や、離婚した元配偶者ではなく第三者を後見人に指定したい場合などに定めることが多いでしょう。

未成年後見人は、親権者に代わり未成年者の財産の管理や身の上の監護を行います。さらに、未成年後見人が役割をきちんと果たしているかを監督する「未成年後見監督人」を指定することもできます。

遺言の執行に関すること

遺言がきちんと実行されているかどうかを、遺言を作成した本人が確認することはできませんし、自分で実行することも不可能です。そのため、遺言を実行する人を指定できます。

遺言執行者の指定

遺言では遺言執行者を指定できます。相続人以外の第三者を指定できますし、遺言執行者の選任を指示することもできます。相続人間でのトラブルが予想される相続や、相続人に不利な内容の遺言の場合、相続人廃除をするケースなどは特に必要になるでしょう。

遺言の効力・遺言で出来ない事とは?

遺言は絶対的なものではありません。次のようなことは遺言では実現できません。

遺留分減殺請求を禁止すること

被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分といって最低限の相続財産を手にする権利があります。もしも他の相続人や遺贈者に自分の遺留分を侵された場合は、遺留分減殺請求により取り戻すことができます。

これは民法で定められた権利ですので、遺言によっても禁止することはできません。

結婚・離婚・養子縁組

実子の認知は遺言でできますが、養子縁組はできません。また、結婚や離婚も遺言ではできません。

法的効力がないもの

遺言で示せる事項は、法的効力があるものに限りません。

付言事項

付言事項とは、葬儀の方法や埋葬場所などの希望や、遺産分割に関する希望などです。法的効力はありませんが、被相続人の相続人への意思表示として有効です。

例えば、自分の死後の配偶者の生活がどれだけ心配でも、他の相続人へ遺留分減殺請求を禁止することはできません。

しかし遺言に、「配偶者がどれだけ多くの犠牲を払って自身の財産形成に寄与したか・自分の死後に配偶者の生活が非常に心配であること・子らで配偶者を支えて欲しいこと」というようなメッセージを付言事項として示すことで、子らからの配偶者への遺留分減殺請求を防げる可能性もあります。

遺言書の作成は専門家へ相談を

遺言は何を書いても効力を発揮するわけではありません。「被相続人の意図に沿った相続が行われるように」「相続人が困らないように」、さまざまな影響を考えて作成する必要があります。

また、遺産分割の方法が細かく指定できるということは、相続人の相続税負担についてもあらかじめ考えておかなければいけないということです。

遺言の作成を考えている方、今の遺言の内容が適正か不安な方は、専門家へ一度相談してみることをお勧めします。税理士なら、相続人の税負担も考慮した最善のアドバイスができるでしょう。

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