贈与税がかからない!非課税枠を活かした節税方法
贈与税には「非課税枠」があります。この非課税枠(税金がかからない枠)を上手に活用することにより将来かかる相続税を大幅に節税することもできます。節税に有効な暦年贈与の非課税枠は110万円ですが、上手に活用すれば110万円以上の贈与を行うこともできます。今回の記事では贈与税の非課税枠や節税方法として有効な様々な制度についてご紹介します。
2種類の贈与税
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つ種類があり、贈与する人は贈与する相手ごとにどちらの課税方法を使用するか選択することができます。
贈与税の「暦年課税」と「相続時精算課税」の違い
暦年課税と相続時精算課税にはいくつかの違いがあります。
暦年課税と相続時精算課税の非課税枠
非課税枠とはその金額までは贈与しても税金がかからないという限度金額のことです。
非課税枠の違い
暦年課税 | 110万円 |
---|---|
相続時精算課税 | 2500万円 |
暦年課税の非課税枠は110万円なのに対し、相続時精算課税の非課税枠は2500万円あります。それぞれ110万円、2500万円までの贈与に税金がかかりません。
贈与する側・される側の条件
暦年課税、相続時精算課税にはそれぞれ贈与する側、される側の条件が異なります。
贈与する側の条件
暦年課税 | 条件なし |
---|---|
相続時精算課税 | 60歳以上の父母 又は祖父母 |
贈与される側の条件
暦年課税 | 条件なし |
---|---|
相続時精算課税 | 20歳以上の子や孫 |
暦年課税には贈与する側、される側ともに条件がないのに対し、相続時精算課税は60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子や孫へという条件があります。
贈与税で節税効果があるのは暦年課税
「相続時精算課税」は非課税枠も2500万円ありますし、節税対策として魅力的に思えますが、相続時精算課税で贈与した財産は相続の際に「相続財産」として課税されます。
つまり相続対策として有効なのは非課税枠は110万円ですが、「暦年課税」です。
暦年課税で贈与税を節税する方法
この暦年課税の110万円という非課税枠をコツコツと使って贈与していけば「一切税金をかけずに」財産を分配していくことができます。
この記事のポイント
暦年課税のデメリット
暦年課税で贈与税を節税するとしても、多額の財産を移す場合に時間がかかる
孫も合わせて非課税枠を110万円以上に
もし特定の人に対して贈与したいということでなければ、暦年課税贈与では対象者のしばりはありませんので、「贈与する対象者を増やすことによって」110万円以上の財産を移転させることができます。
財産を多く持っていて、できるかぎり生前に財産を移転させ相続財産を少なくしたいという場合、暦年贈与を使い贈与する対象者を増やし毎年財産を移転させていくことが有効です。
具体的には贈与する対象を子供だけでなく「孫」も対象として、それぞれに110万円の非課税限度額を使うことなどが考えられます。
110万円以下の金額であれば申告も不要
暦年課税のメリットの一つは申告が不要なことです。相続時精算課税では贈与を受ける側の人が贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を一定の書類とあわせて贈与税の申告書に添付して提出しなければなりません。
贈与税の申告書類
暦年課税 | 必要なし |
---|---|
相続時精算課税 | ・相続時精算課税選択書 ・添付書類 |
しかし暦年課税の場合には申告は不要です。
※申告は不要ですが「贈与契約書」を作っておくことは必要です。
110万円以下でも申告が必要になるケース
贈与税は受ける側にかけられる税金ですので、親が子に110万円以下で贈与していたとしても、子供側で「その他にも贈与を受けていた場合」、年間で受けた贈与は110万円を超えてしまいますので申告が必要になります。
贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の価額の合計額にたいして税金がかけられます。
この記事のポイント
贈与税の注意点!
子や孫に贈与する場合、その子や孫が他からも贈与を受けている場合には注意が必要
決まった時期+決まった額の贈与は注意
税金もかからず申告も不要な暦年贈与、良い面ばかりのように見えますが、注意しなければならないことがあります。それは税務署から「連年贈与」とみなされて税金がかけられてしまうことです。
連年贈与とみなされるケース
- 決まった時期
- 決まった額
毎年「決まった時期」+「決まった額」を贈与する場合、このようなケースでは税務署としては「あらかじめ決めていた額を分割して贈与したもの」とみなして、その合計額を贈与としてみなす場合があります。このことを「連年贈与」と言います。
低い税率で贈与しておくということも検討
この連年贈与とみなされてしまうことへの対策としては連年贈与とみなされない対策としては「贈与の時期をずらす」こと、そして「贈与の金額を変える」ことなどが考えられます。
連年贈与とみなされないために
- 贈与の時期をずらす
- 贈与の金額を変える
その他、110万円を超える額を贈与し申告しておくことも有効です。さらに200万円までは110万円の基礎控除を引いた額に対して10%の税率で済みますので、あまり税金はかかりません。
例)200万円の贈与を受けた場合
(200万円-110万円)×10%=9万円
200万円の贈与に対しては9万円の税金で済みます。
相続前3年の贈与は相続財産に加算されるので注意
相続対策として暦年贈与によって遺産を分配していても、贈与していた方が亡くなった場合、亡くなる前3年の間に贈与していた分は「相続財産に加算」されるので注意が必要です。
貸し借りであれば贈与にならない?
貸し借りであっても一定の場合には認められず贈与として課税される場合があるので注意が必要です。
- 親と子、祖父母と孫など関係
- 返済能力、返済状況から見て金銭の賃借と認められる場合
- 無利子の場合(利子相当額が贈与として扱われることも」
- 「あるとき払いの催告なし」、「出世払い」のような場合
このような場合、貸し借りではなく贈与として認められ課税される場合があります。
様々な贈与に関する非課税や特例制度
暦年課税贈与、相続時精算課税贈与という方法の他にも様々な非課税枠や特例があります。
贈与に関する非課税や特例
配偶者控除 | 最高2000万円の控除 |
---|---|
教育資金の一括贈与 | 最高15000万円が非課税 |
住宅取得等資金の贈与 | 最高1200万円が非課税 |
株式贈与の特例 | 全額猶予 |
配偶者控除で非課税枠が2000万円となる特例
- 婚姻関係が20年以上の夫婦
- 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与
このような場合には基礎控除110万円の他に最高2000万円までの控除(配偶者控除)を受けることができます。
結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税
- 平成27年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間
- 父母や祖父母から20歳~49歳の子供や孫に対して
- 結婚、出産、子育てのための資金を贈与した場合
贈与を受けた一人につき1000万円(結婚に際して支出する費用については300万円)までは贈与税が非課税となります。
教育資金の一括贈与時の非課税
- 平成25年4月1日から平成31年(2019年)3月31日までの間
- 直系尊属(曾祖父母・祖父母・父母等)から
- 30歳未満のひ孫・孫・子へ教育資金を贈与した場合
受贈者1人につき、1500万円まで贈与税が非課税となります。(学校等以外(塾・予備校等)へのお支払は500万円まで非課税)
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
- 平成27年1月1日から平成33年(2021年)12月31日までの間
- 父母や祖父母など直系尊属からの贈与
- 自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合
一定の要件を満たすときは、一定の金額が非課税(平成30年度中の契約締結で最高1200万円)となります。
株式で贈与する場合の特例
この特例は贈与税の申告において会社の後継者が贈与を受けた一定の非上場株式等に対応する贈与税額を一定の要件の下に非上場株式等の贈与者が死亡する日等まで納税を猶予する制度です。
この制度の適用を受けた非上場株式等は、原則として贈与者の死亡のときに受贈者が贈与者から相続や遺贈によって取得したものとみなされ、相続税の課税の対象とされ、その時に納税が猶予されていた「贈与税額は免除」されます。
一定の要件を満たす場合には、そのみなされた非上場株式等について、非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の「相続税の納税猶予」及び「免除の特例」の適用を受けることができます。
まとめ:贈与税がかからない!非課税枠の活用方法
いかがだったでしょうか?今回の記事では贈与税をかけずに非課税枠を活用する方法についてご紹介しました。
贈与には相続時精算課税と暦年課税がありますが相続税対策とする場合には暦年課税でコツコツと贈与していくことが有効です。
暦年贈与非課税枠活用のポイント
- 時間をかけてコツコツと贈与
- 子や孫へ贈与し非課税枠を増やし遺産を分配
- 200万円までの低い税率で贈与
また期間限定での特例や制度も条件が当てはまる場合には有効です。
様々な贈与に関する非課税や特例制度
- 配偶者控除で非課税枠が2000万円となる特例
- 結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税
- 教育資金の一括贈与時の非課税
- 株式で贈与する場合の特例
これらの様々な制度を活用すれば相続税を大幅に抑えられる可能性があります。具体的な節税方法については相続専門の税理士にご相談ください。