遺産分割 2024/11/6

相続で遺産分割調停を利用すべきケースとは

相続で遺産分割調停を利用すべきケースとは

遺産分割の話し合いに応じない相続人や、連絡への返事のない相続人がいる場合、話し合いが決裂してしまった場合など、遺産分割協議がまとまらない場合は、調停を申し立てることができます。今回は遺産分割調停のメリット・デメリット、調停を利用した方がよいケースについて解説します。

遺産分割調停のメリット

「大袈裟にしたくないから」「これ以上揉めたくないから」などの理由で遺産分割調停を避けたいと考える方は多いでしょう。

しかし、遺産分割協議で一度揉めた場合、長期間話し合っても解決しないこともあります。そして遺産分割を終えないとさまざまな不利益が生じてしまいます。

遺産分割を進めることができる

遺産分割調停のメリットは、遺産分割協議では進まなかった遺産分割を少しずつでも進めることができるということです。遺産分割協議には期限がなく、協議をする日程や頻度も決まっていませんから、協力的でない相続人がいれば、いつ終わるかもわかりません。

これに対し遺産分割調停は、協議をする日(調停期日)を裁判所が決めて相続人に通知します。欠席したことへのペナルティはありませんから、欠席者がでて調停が不調に終わることもあります。しかし、もしも調停が不調に終わってしまい審判へ移行したとしても、いつかは決着します。

いつまでも協議を続けていたり、遺産分割を投げ出してしまうよりはよいでしょう。

遺産分割をしないと…?

遺産分割に期限はありません。そして被相続人の財産は相続人がいったん共同で所有しているような形になります。そのため遺産分割を終えないと、何をするにも相続人全員の同意や書類が必要になります。相続人が決まらない限り手続きを進められないものもあります。

不動産の名義が決まらないとどうなるか?

相続財産に不動産が含まれる場合に、その不動産の相続人が決まらないと相続人全員で共有していることになり、不動産の用途が限られてしまします。不動産の賃貸・売却が制限され、もしも法定相続割合の部分だけ売却しようとしても、その価値は著しく下がってしまうか、値がつかないでしょう。

相続登記の問題もあります。遺産分割が終わらない場合は法定相続分での登記をするか、相続登記を見送ることになってしまいます。相続登記をしないままの不動産は次の相続でも負担となってしまいますから、きちんと登記をして問題を解決しておくべきでしょう。

相続税の申告は?

遺産分割協議が終わっていない場合でも、相続税の申告はしなければなりません。そして、その納税額は「法定相続分で相続した」と仮定したものになります。つまり実際は相続財産を活用できない状況でも、納税義務が発生してしまうのです。

さらに、遺産分割協議が終わっていない状況では、各種特例の適用を受けることができません。配偶者控除や小規模宅地の特例をはじめとする相続税の優遇措置は相続税負担が大きく軽減されるものが多く、実際に相続税を支払う必要があるケースは少ないものです。

しかし、優遇措置を受けられなければ、控除・減額前の相続税を全額支払う必要があるのです。配偶者控除や小規模宅地の特例については、相続税申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、申告期限後3年以内に遺産分割協議が成立すれば適用され、還付を受けることができますが、一時的な負担は大きなものでしょう。

また、物納・農地等の納税猶予・取得費加算の特例・事業承継による納税猶予の特例等については、あとで手続きをして還付を受けることはできません。

被相続人の銀行にあるお金が使えない?

相続財産に銀行預金がある場合、相続が開始すると預金は凍結されます。そして凍結を解除するには相続人を確定する必要があるのです。つまり遺産分割を終えていないと払戻しを受けられない可能性がでてきます。

遺産分割調停のデメリット

遺産分割調停のデメリットについてもみていきます。

1年以上かかるケースも

個々の相続のケースによっても異なりますが、遺産分割調停は一般に半年~1年以上かかります。月に1回程度の話し合い(調停期日)が繰り返し行われますので、相続人が負担に感じることも多いでしょう。裁判所が遠方の場合は交通費もかさみますが、電話会議やテレビ会議を利用する方法もあります。

相続財産が少ない場合は、調停よる相続人の負担を考えると相続放棄を選択した方がよい場合もあるでしょう。

申立人の意見が通るとは限らない

遺産分割調停では、申立人の希望ばかりを考慮して話し合いを進めてくれるわけではありません。相続人全員の希望を踏まえて話し合いをしますので、申立人の意見が通るとは限らないのです。

遺産分割調停を利用したほうがよいケース

それでは遺産分割調停を検討した方がよいのは、どのようなケースでしょうか?一定以上の相続財産があり、相続放棄を希望しないことを前提として、それぞれのケースをみていきます。

遺産分割協議が決裂した

遺産分割協議は相続人間での話し合いですから、話し合いが決裂することはあり得ます。その場合、遺産分割を放置せずに調停へ進んだ方がよいでしょう。

遺産分割協議で長期間揉めている

遺産分割協議で何カ月も揉めている場合も、調停を検討しましょう。遺産分割協議でのトラブルは感情的なもつれの場合が多く、そのような場合いくら話し合っても解決しないこと可能性が高いものです。遺産分割協議が長引くことで逆に揉め事が大きくなってしまう危険もあります。

協力的でない相続人がいる

遺産分割協議を行いたいと他の相続人がいくら連絡をしても、協力しない相続人もいます。「遺産分割に関わりたくないから」「協議をしても自分の意見が聞き入れられないから」「相続財産である家屋に住み続けたいので遺産分割したくない」など、理由はたくさん考えられます。

相続人全員が参加しないと遺産分割協議は成立しない上に、協議への参加は強制できないのです。このようなケースでは調停を申し立てて裁判所から調停期日を通知してもらった方が早いでしょう。

他の相続人の意見を聞き入れない相続人がいる

遺産分割で揉める以前に、他の相続人の意見を全く聞き入れない相続人がいるケースも多いものです。被相続人と同居していた相続人が独自の権利を主張し、他の相続人の意見を聞き入れない可能性もあります。長男や長女が年下の兄弟姉妹が話を聞き入れないこともあるでしょう。

相続人間での力関係などにより、正当な意見を聞き入れられない可能性がある場合は調停を申し立てることを検討してもよいでしょう。

相続の問題は税理士に相談を

相続が発生すると、相続人は遺産分割やそれにともなう納税など、さまざまな問題を解決しなければなりません。しかし相続人は協議のプロでも税金のプロでもないことが大半でしょう。相続人が複数いる場合には、遺産分割協議がまとまらない可能性もあります。

遺産分割の問題が発生しそうな場合は、早めに税理士などの専門家へ相談し、アドバイスを受けることをおすすめします。税理士なら、相続税の負担を加味した専門的なアドバイスができるでしょう。

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