遺産相続の基本 2024/11/6

再婚は遺産相続にどう影響する?再婚家庭の相続における注意点

再婚は遺産相続にどう影響する?再婚家庭の相続における注意点

離婚や再婚が珍しいことではなくなった現在では、再婚後の相続を心配する方、相続が発生したが親が再婚であることがどう影響するのかわからない、という方が増えています。 そこで今回は、再婚家庭の相続の基本、再婚後の相続で問題となりやすいことや、その対策について解説します。

再婚家庭の相続関係(相続権のある人とない人)

再婚家庭では、元配偶者との間にあった家庭、現在の配偶者との間の家庭という二つの家庭への相続が発生する可能性があることから、普通の家庭よりも相続関係が複雑になります。

まずは再婚家庭において、それぞれの相続の権利がどうなるのかを見ていきましょう。

配偶者の相続権

再婚した配偶者は、生存していれば必ず相続人になります。婚姻期間が短かったとしても相続人から除かれることはありません。

元配偶者の相続権

元配偶者は離婚した時点で被相続人とは他人ですから、相続人にはなりません。婚姻期間が長かったとしても、離婚してすぐに相続が発生(元配偶者が死亡)したとしても、相続をする権利はありません。しかし以下の2点には気を付けなければなりません。

財産分与請求

元配偶者が離婚時に財産分与を受けていなかった場合、2年間は財産分与請求権を行使できます。もしも離婚後2年以内に相続が発生した場合は、相続人に対して財産分与を請求をされる場合があります。

未払いの養育費

元配偶者の元にいる子への養育費が未払いの場合は、その支払い義務は死亡後も残り、相続人に請求されることがあります。ただし、相続発生後にかかる養育費は支払い義務がなくなります。

子が18歳までの間に養育費を支払うという取り決めをしていて、子が16歳の時点で相続が発生した場合、16歳までの間の養育費に未払いがあれば請求される可能性があり、16歳から18歳までの間の養育費は誰にも支払う義務がありません。

配偶者との実子の相続権

再婚した配偶者との実子は必ず相続人になります。相続発生時に配偶者が妊娠している場合、胎児も同様に相続人です。

配偶者と内縁関係にあった間の実子

再婚の前に内縁関係で生まれた子は非嫡出子(婚姻関係にない男女間の間に産まれた子)です。この場合、実子として認知していなければ養子にしない限り相続人になりません。

認知されていれば相続人となり、内縁関係の両親が結婚すると自動的に嫡出子(婚姻関係にある夫婦の間に産まれた子)になります。

元配偶者との実子の相続権

元配偶者との間に実子がいれば、その全員が相続人になります。親子関係は配偶者との離婚で解消されるものではないからです。実子との法的な親子関係は、長い間疎遠でも、子が成人になっており経済的に自立しているなどの事情があっても、変化することはありません。

配偶者の連れ子の相続権

配偶者の連れ子は、再婚しただけでは相続人になりません。配偶者と婚姻関係を結んでも連れ子と法的に親子関係になるわけではないのです。連れ子を相続人にするには、連れ子と養子縁組をする必要があります。

連れ子はみなし実子

相続税で基礎控除額の計算をする時などには、法定相続人の人数がポイントとなりますが、法定相続人に数える養子の数は1人ないし2人(実子が1人もいない場合)とされています。

法定相続人の人数が多ければ多いほど納税負担が減ることから、養子によって無制限に課税回避が行われることを防ぐためです。しかし、配偶者の連れ子を養子とした場合は実子とみなされ、法定相続人の人数に何人でも含めることができます。

再婚後の相続で問題になりやすいこと

再婚家庭の相続では、元配偶者との間の子と疎遠になっていることもあるでしょう。普段から話し合いができないことで、それぞれの事情を配慮しあうことができずに揉めてしまうこともあります。

再婚した方が亡くなった際の相続で、問題になりやすい事項についてみていきます。

相続人が把握しづらい

再婚後の相続では、相続人の把握が難しいケースもあります。被相続人の前の家族とは疎遠であることも珍しくありませんし、元配偶者との子がすでに死亡しており、代襲相続となるケースもあります。

そのため推定相続人全員を把握するのが容易ではなく、予期せず元配偶者との間の子から相続財産を要求される可能性もあります。遺言があったとしても、元配偶者との間の子は遺留分を請求できますから無視はできません。

連れ子は養子縁組しないと相続できない

連れ子は養子にしないと相続できませんから、養子縁組をしていなかった場合は相続発生後の生活に困窮してしまうリスクもあります。

生前に養子縁組をしていれば問題ありませんが、実子に養子縁組を反対されたり、養子縁組が間に合わなかったりというケースもあります。再婚後の離婚率が高いため、再婚相手の連れ子との養子縁組をためらうケースもあるでしょう。

連れ子を養子にしていなかった場合

連れ子を養子にしていなかった場合、もしも配偶者がすでに死亡していたら、再婚した家には相続財産が一切渡らないことになってしまいます。

配偶者が生存していれば配偶者に一定の相続権がありますが、元配偶者との間に実子がいれば法定相続分は実子らと1/2ずつです。配偶者らがその後生活していくのに十分な遺産が渡らないこともあるでしょう。

<配偶者と元配偶者との間の子が相続人のケース>
相続人 相続割合
配偶者 1/2
元配偶者との間の実子 1/2

相続割合をめぐるトラブル

元配偶者との間に実子がたくさんいれば、それだけ元配偶者側に渡る遺産が増えます。

再婚した配偶者との間に実子も養子にした連れ子もなければ、相続財産の半分が元配偶者の家に渡るのです。現在の配偶者との間に子が1人で、元配偶者との間に子が複数いる場合にも、不公平感が生じるかもしれません。

元配偶者との間の子がすでに成人している場合や養育費を支払い済みの場合、現在の配偶者との間の子は幼くこれからお金がかかる場合など、個々の事情によっても双方の要求がかみ合わず揉めてしまう可能性があります。

<子が5人の場合>
相続人 相続割合
配偶者 1/2
配偶者との実子 1/10
元配偶者との実子1 1/10
元配偶者との実子2 1/10
元配偶者との実子3 1/10
元配偶者との実子4 1/10

相続税負担を考慮した相続がしづらい

夫婦で住んでいた被相続人名義の家屋を相続する場合は、小規模宅地の特例によって相続税負担が減ることはよく知られていますね。また、配偶者には1億6千万円もしくは法定相続分までの配偶者控除がありますから、配偶者が多く相続することで相続税負担をゼロにできるケースは多くあります。

しかし、このような特例を使って相続税の負担を減らしたいと考えても、他の相続人の協力がなければできません。元配偶者との間の子とは疎遠なことも多いでしょうから、相続税負担までを考慮した遺産分割を受け入れてもらえないこともあります。

2次相続の問題

養子縁組をした再婚相手の連れ子や再婚相手との実子は配偶者からの二次相続(被相続人が亡くなったあとにその配偶者が亡くなることにより発生する2回目の相続)があります。しかし、離婚した配偶者との子には二次相続が発生しません。

つまり配偶者控除によって税負担を減らしたとしても、元配偶者との子にはメリットがないのです。このことが遺産分割で揉める原因となることもあります。

再婚後の相続で揉めないために

推定相続人の把握を早めにしておく

再婚後の相続で揉めないためには、早い段階で推定相続人を把握しておくことが大切です。それぞれの納得できる形での相続について生前に話し合うことができれば、相続発生後に揉めるリスクを低くできます。

連れ子と養子縁組をしておく

連れ子に相続させたいなら、養子縁組をします。相続は事故や災害で突然発生することもあります。養子縁組の意思が確実なら、先延ばしにせずに手続きを終えましょう。

遺留分を侵さない遺言を作成する

再婚後の相続トラブルの多くは、遺言を残すことで回避できます。ただし遺留分といって相続人が最低限請求できる取り分を侵害する遺言内容だった場合、遺留分減殺請求をされてしまうリスクがあります。法定相続割合と遺留分について正しく理解し、遺留分を侵害しない遺言作成をおすすめします。

元配偶者との子に遺留分を放棄してもらう

「元配偶者との子には遺留分さえ渡したくない」「遺留分を請求されると家を手放さなければいけなくなる」といったような場合、どうしたらよいのでしょうか。

そもそも遺留分は請求しなければ手に入りませんから、相手方が遺留分を必要とせず遺留分減殺請求をしてこなければ何も問題とはなりません。しかし、元配偶者との子とは疎遠な場合が多いでしょう。不意に遺留分減殺請求をされて困るケースもあります。

相続発生前に相続放棄はできませんが、遺留分の放棄はできます。元配偶者との間の子には十分な生前贈与をする代わりに、遺留分を放棄してもらうという方法も考えられます。

熟年再婚は子の反対に合うことも

また、高齢になってから再婚しようとすると、実子の反対にあうこともよくあります。「配偶者やその連れ子が相続権を放棄するなら再婚を許す」と言われることもあるでしょう。

しかし前述のとおり、相続発生前に相続放棄はできませんし、遺言によっても配偶者の遺留分は侵害できません。この場合考えられる対策として、再婚相手には遺留分を放棄してもらい、連れ子は養子にしない、さらに子らが納得する遺言内容とすることなどがあります。

再婚した方の相続は税理士に相談を

再婚した方が亡くなった場合、相続関係は複雑になりがちです。そのため、遺産分割対策や相続税申告対策は早めに行うことをおすすめします。

税理士なら、相続税申告へむけた実務的なアドバイスが可能です。

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